1-ope 1-工夫

現在の環境になれてくると、よくある骨折手術が惰性になりがちです。いつもやり慣れている方法も特に問題ないことが多いのですが、細かいことにこだわるとまだまだ改善点は多くあります。例えば、皮切を小さくするや、筋肉の損傷を少なくするなどです。

私が、研修医の頃と、15年目の今とでやり方が変わった所をまとめます。

①大腿骨頚部骨折:後方アプローチは変わらない。しかし、CPP(Conjoint tendon preserving posterior)approachを用いるようになり、短外旋筋をできるだけ切らないようにした。この方法は前方アプローチと比較しても脱臼率は変わらないことが報告されている。

②大腿骨転子部骨折:近位、遠位ともに1本打ち⇨2本打ちに。基本的に解剖型か、髄外型に整復。

③膝蓋骨骨折:単純骨折なら近位と遠位に1cmの創を2ヵ所ずつのみでテンションバンドワイヤリング。粉砕は変わらず縦皮切。

④踵骨骨折:波状皮切のみでアプローチ、整復固定。L字切開は研修時代しかしたことがないが、波状皮切を習得してからはL字切開が必要な症例はないと考えている。

⑤鎖骨骨折:以前は完全にオープン、骨折部剥き出しで整復固定。今は基本的にMIPO。骨折部を開けることは純粋な2part以外はしない。

⑥仙腸関節脱臼骨折:TITS(trans-iliac trans-sacral screw)、IS(ilio sacral screw)、TIRF(Trans-iliac rod and screw fixation)でするようになった。Mプレートは使わなくなった。

⑦転位の小さな恥骨骨折、寛骨臼骨折:骨折型によるが、ナビゲーション下にスクリューのみの固定をすることもある。ナビゲーションがないときは転位が小さい場合は保存か、オープンでしていた。

こうやって思い返すと、最初の指導医に教わったやり方はだいぶ今の方法に置き換わっていることがわかります。これは自分で勉強し、周りの影響も多大に受けつつ、取捨選択してきた結果で時代とともに仕方のないものだと思います。逆に上腕骨や肘、前腕はあまり変わっていません。他に変わったことといえば、鎖骨骨折や上肢の骨折を斜角筋ブロックや鎖骨上窩ブロックでやるようになったことでしょうか。自家麻酔になり麻酔科へのコンサルトが不要で、オペ室スタッフとのやり取りだけで手術を決められるので非常にスムーズです。受傷当日、もしくは翌日に手術を入れることが可能です。研修医の頃は、当然ですが毎回上司や麻酔科、オペ室との相談というお伺いを立てる回数が多かったです。人に依頼すること、すなわち人に依存する回数が減ったのは本当に楽でストレスがありません。

表題の1-ope, 1-工夫は師匠の一人から教わった話で、師匠も若い頃に惰性の日々を送ることがあり、その時の上司に「1-ope, 1-工夫」と思って毎回の手術に何らかの発見や新しいことをしていこうと言われ奮起したそうです。無理して新しいことをする必要はないですが、普通に手術に望むよりもそう思ってするほうが勉強になります。手術以外でも日常生活にも通じることだと思っているところです。

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