先日、足関節周囲の開放骨折後の軟部組織欠損が激しい症例に遊離広背筋皮弁術をしました。それから1週間以上が経過し、皮弁部の血流も問題なく経過しているのでそろそろ記録として残してもいいかと思い記載します。
遊離皮弁術はOlthoplastic surgeonを目指していた僕にとって特別なものでした。外傷整形外科医を目指そうと決めた後期研修医4-5年目の頃、3次救急病院に勤めていましたが、下腿開放骨折後の軟部組織欠損を完治できる外科医は自施設にはいませんでした。そのため、外部からAO先生(ほぼバレですが)に来ていただきALT(antero-lateral thigh flap:前外側大腿皮弁)をしていただきました。その際に助手として入ったのが遊離皮弁術との出会いです。AO先生の技術は素晴らしく、淀みなく進むメス、モスキートケリー、血管の剥離、そして9-0,10-0ナイロンでの血管縫合。どれをとっても一流で、まだ後期研修医であった僕の目にはAO先生はあこがれの存在となっていました。
それからいくつかの病院を回り、一時期はもう自分は遊離皮弁をすることなく年取っていくのかなと思った時期もありましたが、座学と手羽先の血管縫合練習を繰り返し、AO先生との出会いからもう10年近くが経って、ようやく自分で遊離皮弁を成功させることができました。ほぼ介助なしの自力での執刀は初めてなので、この成功体験は大きかったです。
昨年の4月から今の病院に来て、手外科の上司と出会い、指切断の再接着術、有茎皮弁術、遊離皮弁術とOlthoplastic surgeonとしての経験値が増えています。血管縫合はもちろんですが、遊離皮弁術ができれば骨折に伴う軟部組織損傷に対してはほぼ対応できると思っています。これは外傷整形外科医として大きな武器を手にしたことになり、外部から皮弁術ができる外科医を呼ばなくてもいいし、患者さんの状態の本当にいいタイミングで手術を予定することが可能になります。自分が所属する医局で、外傷をする整形外科医として遊離皮弁術ができるDrは自分は知りません。自分の希少価値を高める意味でも必要不可欠な手技でもあります。
遊離皮弁術の前勉強として、解剖の知識はもちろんですが、cadaverによる解剖実習、血管縫合の練習(鶏肉の血管など)も大切です。そのあたりはある程度してきたので、今回のイメージトレーニングとして一番活用したのは・・・なんとYOUTUBEでした。この動画を何回も見返して本番に挑みました。
https://www.youtube.com/watch?v=Lk5_KcL8i9g&t=636s
こんなクオリティーの高い動画が無料で見られるなんて本当にありがたいと思います。